人間、何かを始めるときには、本当にほんの些細なきっかけが重要だ。我々は常に無数の黒くて深い穴の淵に立っており、何かが背中を軽く押せばその奈落へと落ちてゆく。そして一度落ちたらそこからはい出るのは容易ではない。これが「ハマる」ってことだわなー。ちなみに落ちた先が楽園か地獄は落ちてみなければワカラナーイ♪。俺も本当にささいなことから自家製燻製を作ろうと思い立った。だが、それについては訳あって次の機会に語ることにする。今は先に進もう。
さて、最初に作ったのは燻製ささみだった。鶏のささみの燻製だ。これはものの見事に失敗し、一週間もの準備期間と休日を丸一日費やして作りながら、すべて廃棄する羽目になった。食べられるものにすらならなかったのだ。理由は後述する。そして次の週、二番目に作ったのはスモークチキンだった。いわゆる鶏の胸肉の燻製だ。スモークチキンという場合はどうもこの胸肉の燻製をさす場合が多いようで、ささみやモモ肉は別枠扱いになってることが多いようだ。ここで見事成功!!。はい、正直に言おう。食べたとき、「この世にこんなにうまいものがあるのか」と感動した。それほどまでに自家製はうまい。ここで完全に穴の底にはまり落ちたってわけだ。その後、無事に鶏ササミの燻製にも成功。そこでもうまさに感動!!。これが完全なる「成功体験」と化し、以後燻製から離れられなくなった。
以下、鶏のささみの燻製の作り方を記しておく。

先ずは鶏のささみを用意。筋を除き、フォークを突き刺しまくって穴を開けまくります。これはソミュール液に漬け込むときに肉に味がよくしみこむようにするため。

燻製などを漬け込む液をソミュール液と称する。俺はささみを漬け込むときには醤油と白ワイン1:1くらいにショウガやニンニク、スパイスを加えたものを作る。作るったって単に混ぜ合わせるだけなんだが。分量もあまり測ったりはしない。その時の気分だ。
余談だが、「ソミュール液」のもともとの意味は単なる食塩水のことで、塩以外のスパイスなどを入れると、本当は「ピックル液」というらしい。

液と肉が用意出来たらば、当然漬け込むわけだが、ジップロックなどの丈夫な袋に(念のために二重にして)ソミュール液とささみを入れて冷蔵で2,3日寝かせる。くれぐれも、袋がやぶれて冷蔵化が液まみれにならないように注意しなければならない。妻に処刑されるw

2,3日漬け込んだら、肉を液から取り出してボウルの中で流水で洗い、そのまま水にさらして1時間ほど塩抜きをする。塩抜きの時間は漬け込んだ日にちや液の塩分濃度などにもよるだろうが、ささみのような小さなものの場合はさほど長時間は必要ない。ささみの場合はしない人もいるようだ。塩抜きがすんだら、キッチンタオルなどで水気をとる。
その後、写真のように乾燥用のかごに入れるなりして風にさらし、乾燥させる。この工程が本当に重要で、表面がさらりと乾いて肉が乾燥して少し硬くなるぐらい、やや干物っぽくなるぐらいまで乾燥させる。暖かい季節の晴れた風の強い日なら、一時間も外気にさらせば乾燥してくれるが、そうではない日は扇風機で風を当てるか、冷蔵庫に一昼夜ラップなしで入れておくなりして徹底的に乾かす。何を隠そう、俺が最初に作ったささみの燻製が大失敗したのは、ここがわかっていなくて乾燥をいい加減に行ったためだ。表面に大量の水分が残っていたため、燻煙時に熱が加わると、その水分で肉が煮込まれたようになってしまい、ぐずぐずに崩れて粉状になってしまったのだ。こうなるともう食えたものではない。とにかく徹底して表面の水分は取り除く。

その後、いよいよ燻煙。燻製器という容器の底に電熱機を仕込んでその上にチップの乗った金属皿を置き、チップに熱を加えて煙を出す。チップにはサクラやリンゴなど、いろいろな種類の木が使われるが、俺はいつもそれらを混合したミックスを使っている。ちなみに、燻煙前にも燻製器の中で電熱機だけを着けて温度だけ上げ、温熱乾燥を30分ほど行う。燻煙中は燻製器の中は温度が上がり続けるが、こういう場合は温度が5,60度を保つようにする。放置すると100度近くになることもあるため、時々電熱機のスイッチを切って調整する。もちろん、そのためには燻製器に温度計を着けておく必要がある。

チップを追加しながら1,2時間も燻煙すれば、このようないい色具合に仕上がる。ささみの場合は写真のようにサナギマンぐらいの色合いになっていればとりあえず成功。剛力招来!!。温度が十分に上がっていれば、低温調理効果でささみの芯まで火が通ってよい食感になっているはず。中が生のままになっているようなら、すこしオーブンであたためてやる。
この完成写真にはチーズが一緒に写っているが、チーズの色具合を見れば、一緒に入れている食材にもどれぐらい煙が当たっているかを判断する目安になったりもする。そして、何を隠そう、燻製メニューで一番うまいのは、このチーズだったりする。しかも、チーズには下ごしらえも大きな燻製器もいらず、台所で鍋を使って作ることも可能なので、最も簡単で、かつ最もうまい燻製なのだ。
今回、急ぎ足で解説してみたが、需要が有りそうなら、道具についての詳しい解説や、ベーコンその他の作り方も含めて、さらに丁寧な解説も行ってみるかもしれない。
ただ、今回はこれまでにしとうございます。疲れたw
次回は別テーマで書く。ぶっちぎるぜ!!